有機農業が世界を救う日!?

―『21世紀のモデル キューバの有機農業』の提示する可能性

日本有機農業研究会会員・依田郁夫     


●21世紀のモデル
 キューバの有機農業

注文番号 KB1
金子美登、尾瀬あきら、吉田太郎著

A5判/80頁/1000円
共学舎出版企画発行
ほんコミニケート編集室発売

*本書は一般書店では取り扱っていません。
ご注文は、こだわり出版センターで


  


 はじめに「キューバ」と聞いて、僕がイメージしたのは、オリンピックで活躍した

野球などのスポーツ王国か? あるいはカストロやゲバラに象徴される社会主義革命

政権か?はたまたサルサやレゲエなどの気なカリブ海リズムといったところでしょうか・・・。

 さてこのブックレットは、そんなイメージしかないキューバが今、国を挙げて取り組んで

いるという有機農業全面展開の実態と、その知られざる国づくりの方向について紹介し、

「こんな国だったのか」とぼくに目からウロコのカルチャーショックを与えてくれた、

次のような構成のすてきな本でした。

 「21世紀のモデル・キューバの有機農業」金子美登(有機農業主)

 「私のみたキューバ」尾瀬あきら(漫画家)

 「キューバ・緑の社会革命」吉田太郎(都市農業研究会)

 三人の筆者は、いずれも有機農業が開くであろう未来に大きな夢を描いている、

知る人ぞ知る人たちでもあります。その視線や感性は実に鮮やかで、三者三様の

表現の中にも、いのちの存続のため日本の食と農のあるべき途は何か、たいへん

示唆に富んだ興味深い内容がまとめられています。

 ブックレットの後半を占める吉田さんの克明な研究レポートは、丹念に資料収集して

調査し、その裏付けをとるためにキューバ行まで敢行してしまった研究者の、いい意味

での執念が実った力作といえるのではないでしょうか。すでに吉田さんは、日本有機農

業研究会の月刊誌『土と健康』1998年10月号に「赤い国の緑への挑戦」と題するキューバ

有機農業レポートを発表。当時、多くの有機農業関係者に驚きと賛嘆の声をあげさせた

ものです。

 有機農業の里・埼玉県小川町で霜里農場を営む金子美登さんは、農水省の農業者

大学校第一期生で、同窓会長を務めていた最後の年に同窓会記念行事として、

吉田さんの全面的な協力を得て「キューバ有機農業視察旅行」を実現させます。

 そしてもう一人、キューバに並々ならぬ関心を抱いたのが、名作『夏子の酒』で

知られる漫画家の尾瀬あきらさん。尾瀬さんは、『夏子の酒』で舞台の一つとした

霜里農場を訪れて以来、金子さんとは深い友情で結ばれた仲、それでは、と

キューバ行に同行されました。

 キューバはけっして、おそらく多くの方がイメージしているような独裁国家では

ありません。「本書をお読みいただければ、人道性とヒューマニズムに根ざした

キューバ革命が何をめざしてきたのか、そしてどこに向かおうとしているのか。

その全体像を把握することができるだろう」と筆者たちはそれぞれ持ち味を生かして、

紀行文やレポートをまとめています。

 もし私たちの社会が新しい扉を開くことができるとすれば、その一つの鍵が、

キューバの有機農業を基にした国づくりの中に見出されるはずです。そしてまたこの本は、

飽くなき富の追求と自由競争が支配する世界が、いのちの豊かさをベースとした本来の

人間社会へと、いつか救われる日を予感させて、さわやかな感動と共感をよぶのに

ちがいありません。

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