著者から読者へ

「小泉改革」に異議あり
久慈力(ノンフィクション作家)


 自民党総裁選挙を見ながら、「ひょっとすると小泉が当選する」と考え

出したのは、4月の半ば過ぎ頃であった。彼は「憲法改正」「靖国参拝」

「首相公選制」「集団的自衛権の行使」について唐突に主張しはじめた。

わたし自身、若干の危機意識をもっていたが、橋本などが当選するよりは

ましではないかと考えていた。

 しかし、この時期にあるシナリオが進んでいた。一発逆転の「自民党延

命劇」である。主役はもちろん小泉純一郎。演出は何と「平成の妖怪」と

いわれる中曽根康弘大勲位だった。4月16日、中曽根の呼びかけで石原慎

太郎と森喜朗らが集まり、小泉を総裁に勝利させることを申し合わせた。

翌日、中曽根と小泉は会談し、前記のタカ派路線を突き進むことを中曽根

に約束した。中曽根は自分が所属する江藤・亀井派も説得した。亀井は小

泉と政策協定を結び、本選への出馬を辞退した。総裁選挙参議院選挙に勝

利したい青木も橋本ではなく「小泉総裁」を容認した。これで中央の流れ

がかわってしまったのである。

 わたしが小泉批判本を書こうと思ったのは、実に彼が総理大臣に就任し

たその日の4月26日であった。それは小泉が改憲派として、タカ派路線を

突っ走ることに大きな危機感を抱いたからである。しかし、あまり時間が

ない。参議院選挙まで3ヶ月しかない。とすれば1ヶ月程度で原稿を書き、

20日程度で本にしなければならない。わたしも、出版社も、他の仕事をほ

ぼ全面的に停止し、小泉批判本に集中することになった。

 すぐに小泉に関する本、雑誌、新聞記事を集める作業に移った。これは

国会図書館のデータベースなどを参考にし、都立の図書館で定期刊行物に

目を通し、数日で集中的に集めた。それらを読みこなしながら、彼のどの

部分を批判するのか、これをピックアップしワープロで打ち出しながら、

節と章の構成を考えていく。

 それが終わると、引用文を批判するための資料集めを行なった。その間

も所信表明演説、代表質問、予算委員会質疑と情報が次々にあふれて行っ

た。日々の情報を消化し、組み込みながらの作業は大変だった。

 最新情報を取り込みながらの作業は、日々、新たに節や章が増えていき、

そのための新たな情報収集も必要である。当初は1ヶ月の作業なので原稿

の枚数は少なめになると思っていたが、どんどん膨らんでいき、やはり普

通の単行本一冊分の300枚を超えていた。文章が単調にならないように、

読者に読みやすいようにとゴシックで強調を施したのも良かった。写真や

図表は極力控えた。

 情報収集は、政治関連本、主な定期刊行物、全国紙、政党紙を網羅する

だけでなく、神奈川の地元紙、地元図書館などでも資料収集を行なった。

それまでの一年間に石原慎太郎、石原都政の問題に取り組み、5冊の本を

取りまとめていたのも全体の構成を考えるうえで役に立った。

 原稿の完成はほんとうに1ヶ月でできるかの心配があったが、実際は25

日でほぼ完成した。それから超特急でゲラ出し、校正作業をほとんど毎日

のように続け、突貫工事で何と6月14日には完成した。いくつかの不備な

点はあったが、よくこれだけの短期間にこれだけの内容のものを完成でき

たとわれながら驚いているところである。

 この間、もちろん大手の出版社からは「小泉礼讃本」が次々と出版され

ていったが、小泉純一郎を正面から全面批判した本はこの本がはじめてで

あった。これまで56冊の本を出しているが、わたしの本の中では最高のス

ピードで増刷されている。


●「小泉改革」に異議あり  注文番号TY174
そのネライとホンネ大研究
久慈力著
四六判/240頁/2001年/1600円 あけび書房小泉純一郎の過去・現在の言動を著作・インタビュー・論文・発言から総点検し、「誰のため何のための改革なのか」を明らかにする。

目次:軍港・横須賀が生んだ選挙地盤と右寄り思想ー出処と理念/公約だけが先行し中身が見えないー政策と施策/政界再編成の台風となるかー野合と反目

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