地域通貨で連帯した経済社会を
なるほど地域通貨ナビ 著者 森野 栄一
地域社会は元気がありません。地場の経済もデフレ不況のなか停滞しています。なんとかならないものかと、いま地域通貨が注目されています。それは地域の温かい支え合いを取り戻し、地域社会のニーズに応えるネットワークを構築しながら、地域コミュニティに新たな可能性を提供するのではないかと期待されています。
通貨といいますが地域で支え合い、住民が交流し合い、取引を活発にすることを通して地域社会の再生を目指す交流・交易システムです。始めるのは容易です。費用もほとんどかかりませんから、地域社会という人々が暮らす共通領域ですぐ始められるのが特色です。
いま各地で取り組まれている地域通貨には、地域社会のニーズに応じてさまざまなシステムがあります。例えば高齢化の進むなかで福祉のニーズに応える「ふれあい切符」や「タイムダラー」などから、地場経済の振興を目的とした地域通貨までさまざまです。そうしたメニューのなかから自分たちが暮らす地域社会の実状にあった取り組みはなにがふさわしいか住民自身が主体的に考え、取り組んでいくことで、地域社会への多様な参画が得られる取り組みが多様に出現しつつあります。
よく地域通貨はそれに参加する個人の能力を高めるといわれます。つまり、通常の通貨を介した市場的な取引に乗らないような個人の能力を引き出すことができます。ひとは円貨では自分のもつ能力のすべてを評価されてはいません。地域通貨の関係に入ることで、会員はお互いの能力や労力を需要し合い、支えあうと同時に各自の埋もれた力を外に引き出し、一歩前に出て社会的な関わりをもつことができます。
さらに、地域通貨は地域振興や地域活性化の手法としても取り組まれています。それはヒト、モノ、カネ、情報を地域内で循環させ、自立した循環型の地域経済モデルを探求していこうという意向に基づいています。円貨だけでは、「カネ」に色はついていないといわれるように、どこに流れていくかわかりません。これがなるたけ地域内で循環するように方向を与えようとする仕掛けの一つとして地域通貨を活用しようとするわけです。一般に、モノ、カネ、情報がどのように取引されるかは人がどのような取引関係をもつかによって決まります。円貨のみを仲立ちにし、市場的に取引することが支配的ですが、互酬的な交換のあり方は市場的な取引を包摂する形でより広い範囲で成立しますから、モノやサービスが非市場的に取引されることもあります。地域社会が地域のなかでしか流通しない「通貨」を活用することで、その地域にある人の能力や情報、資源などを掘り起こし、域内循環を活発化させることで自立性の高い地域を作ろうとするわけです。地域限定の通貨を併用する複数通貨建ての取引システムを導入し、円貨を地域通貨に「吸着」させるかたちで取引を実現することで、地域通貨ばかりか円貨も地域で循環させようというわけです。
地域通貨のどのシステムにも共通しているのは会員制のシステムとして運営される点です。多くは多角間でバーター取引の決済を行うクラブ制の地域交易システムで、会員は独自の通貨単位を活用して相対で取引します。会員としての連帯感が育まれ、情報の共有や譲渡が自然に達成されるために、参加者が地域社会のなかで果たす役割を自覚しやすく、また積極的な評価も受けやすいので、経済活動がコミュニティ再建という社会貢献にもつながっていることが示しやすいシステムといえます。